伝統色の由来12選
01
憲法色(けんぽういろ)
黒みを帯びた渋い茶色です。足利将軍家の兵法師範を務めた剣術家・吉岡直綱(号を憲法)に由来する染めです。吉岡家は将軍家の衰退後に豊臣秀吉へ仕えましたが、敗戦を機に剣術を離れ、家伝の染色を家業としました。個人名がそのまま色名になった、最も古い例のひとつとされています。
02
猩々緋(しょうじょうひ)
鮮やかな深紅です。戦国武将は南蛮貿易で手に入れた緋色の羅紗を陣羽織に仕立てました。あまりに鮮烈な赤さに、人々は中国伝説の霊獣「猩々」の血で染めたのだろうと想像し、この名で呼ぶようになったといいます。
03
江戸紫(えどむらさき)
青みの強い紫色です。歌舞伎の人気演目『助六由縁江戸桜』で、主人公が締める鉢巻きの色として知られます。京都で染めた赤みの紫「京紫」に対し、江戸で染めたこの紫は、江戸っ子たちの誇りを背負う色となりました。
04
団十郎茶(だんじゅうろうちゃ)
赤みを帯びた渋い茶色です。歌舞伎の演目『暫』で五代目市川團十郎がまとった柿色の素襖に由来し、彼の絶大な人気とともに江戸の町で大流行しました。現在も市川家の襲名披露などの舞台で、この色の裃が受け継がれています。
05
瓶覗(かめのぞき)
藍染めの中でもっとも薄い色です。藍の染料が入った瓶にほんの少し浸けただけ、瓶を覗き込んだだけのような淡さという意味で名付けられました。江戸時代、限られた色の中で染め加減の違いを楽しんだ庶民の工夫が生んだ色です。
06
支子色(くちなしいろ)
赤みを帯びた黄色です。クチナシの実で染められ、名前は実が熟しても口を開けないことにちなんだ「口無し」の言葉遊びが由来です。平安時代には「言わぬ色」として和歌にもたびたび詠まれ、恋心を隠す歌の題材にもなりました。
07
弁柄色(べんがらいろ)
深みのある赤茶色です。酸化鉄を主成分とする顔料で、江戸時代にインドのベンガル地方から輸入されたことが名前の由来とされています。日光に強く熱にも耐えるため、建物の壁や瓦の塗料として長く使われてきました。
08
一斤染(いっこんぞめ)
ごく淡い紅色です。紅花の花びらをわずか一斤(約600グラム)だけ使って絹一疋を染めたことが名前の由来です。濃い紅染めは高価で身分の高い人しか着られない禁色でしたが、この淡さなら誰でも身につけることが許されました。
09
承和色(そがいろ)
淡く沈んだ黄色です。平安時代の仁明天皇が黄色い菊の花を愛したことから、在位中の元号「承和」にちなんで名付けられました。天皇個人の好みがそのまま元号ごと色名として残った、珍しい例といえます。
10
鴇色(ときいろ)
淡い紫みを帯びたピンクです。特別天然記念物トキの、翼の裏側にのぞく風切羽の色に由来します。『日本書紀』にもその名が記されるほど古くから知られ、江戸時代にはトキが身近な鳥だったため誰もが知る色でした。
11
利休鼠(りきゅうねずみ)
緑みを帯びた渋い鼠色です。江戸時代、茶人・千利休の名を借りて名付けられましたが、実は利休が生きた時代との直接の関係はありません。控えめで品のある色合いから「いかにも利休好みだ」と人々が連想し、広まったとされています。
12
深川鼠(ふかがわねずみ)
青みがかった鼠色です。幕府が贅沢を禁じ着物の色を制限した江戸時代、贅沢を嫌った深川の芸者や若者たちに好まれたことが名前の由来です。「四十八茶百鼠」と呼ばれる渋い色のバリエーションのひとつとして定着しました。