巧みな説得・弁論から生まれた四字熟語
由来
楚の国で矛(ほこ)と盾(たて)を売る商人が、「この盾はどんな矛でも貫けない」「この矛はどんな盾でも貫く」と自慢していたところ、ある人に「その矛でその盾を突いたらどうなるのか」と問われ、答えられなくなったという話に由来します。法家の思想家・韓非が、儒家の主張の矛盾点を批判するために創作したたとえ話です。
使用例:「発言と行動が矛盾している」
出典:韓非子(中国・戦国時代)
由来
楚の国の使用人たちが「地面に蛇を早く描けた者が酒を飲める」と競争したところ、一番早く描き終えた男が余裕をみせて「私は蛇に足も描けるぞ」と足を描き足しているうちに、二番目の男が「蛇に足はない」と言って酒を飲んでしまったという話に由来します。楚の将軍を説得するための比喩として使われました。
使用例:「その一文は蛇足なので削った方がいい」
出典:戦国策 斉策(中国・戦国時代)
五十歩百歩
ごじっぽひゃっぽ
多少の違いはあっても、本質的には大差がないこと
由来
「善政を行っているのに他国から人が集まらないのはなぜか」と尋ねた梁の恵王に対し、孟子が「戦場で50歩逃げた兵が、100歩逃げた兵を臆病だと笑えるでしょうか」と問い返した故事に由来します。逃げた距離は違っても、逃げたという点では同じだと諭したのです。
使用例:「多少値段が違っても、品質は五十歩百歩だ」
出典:孟子 梁恵王上(中国・戦国時代)
漁夫の利
ぎょふのり
当事者同士が争っている隙に、第三者が利益を横取りすること
由来
シギ(鷸)が二枚貝(蚌)をつついたところ貝が殻を閉じてくちばしを挟み、両者が意地の張り合いを続けているうちに、通りかかった漁師が両方とも捕まえてしまったという寓話に由来します。趙が燕を攻めようとした際、弁論家の蘇代が「両国が争って疲弊すれば、秦に漁夫の利を奪われる」と説いて出兵を止めさせました。
使用例:「二社が価格競争をしている間に、別の会社が漁夫の利を得た」
出典:戦国策 燕策(中国・戦国時代)
朝三暮四
ちょうさんぼし
目先の違いにとらわれ、結果が同じであることに気づかないこと
由来
猿を飼っていた狙公(そこう)が、貧しくなり餌のどんぐりを減らそうと、「朝に3個、夕方に4個やろう」と言うと猿たちが怒り出し、「では朝に4個、夕方に3個にしよう」と言い直すと猿たちは大喜びしたという話に由来します。一日の合計は変わらないのに、目先の数字で反応が変わってしまう様子を描いています。
使用例:「朝三暮四な提案に踊らされないよう注意しよう」
出典:荘子 斉物論/列子 黄帝篇(中国・戦国時代)
呉越同舟
ごえつどうしゅう
仲の悪い者同士が、共通の困難のために協力すること
由来
長年争ってきた呉と越の人が同じ船に乗り合わせても、嵐で船が沈みそうになれば、まるで左右の手のように協力して助け合うだろう、という兵法書の一節に由来します。孫子は、兵士を追い詰められた状況に置けば自然と団結する、という戦術の説明としてこのたとえを使いました。
使用例:「ライバル企業同士だが、業界の危機には呉越同舟で対応した」
出典:孫子 九地篇(中国・春秋時代)
人物の生き方・器を表す四字熟語
由来
趙が持つ名玉「和氏の璧(かしのへき)」を、秦の王が15の城と交換したいと申し出ました。だまし取られることを恐れつつも使者に立った藺相如(りんしょうじょ)は、秦王に城を渡す気がないと見抜くと「璧を無事なまま持ち帰る」と言い放ち、実際に璧を傷一つ付けずに趙へ持ち帰ることに成功しました。「璧を完うす(たまをまっとうす)」=「完璧」という言葉はこの故事に由来します。
使用例:「完璧な仕上がりで満足だ」
出典:史記 廉頗藺相如列伝(漢・司馬遷)
杞憂
きゆう
実際には起こりそうもないことを、無用に心配すること
由来
杞(き)の国のある人が「天が崩れ落ちてきたらどこに身を置けばいいのか」と心配のあまり夜も眠れなくなり、周りの人に「天は大気が積み重なっただけのもので、崩れ落ちることはない」と説得された、という話に由来します。「杞」の国の人の「憂い」だから「杞憂」です。
使用例:「心配していたが、結局は杞憂に終わった」
出典:列子 天瑞篇(中国・戦国〜漢代)
大器晩成
たいきばんせい
大人物ほど、実力を発揮するまでに長い時間がかかる
由来
「大方は隅無く、大器は晩成す」——非常に大きな四角い箱は、内側から見ると角があるのかどうか分からなくなり、大きな器ほど完成するまでに時間がかかる、という老子の思想に由来します。すぐに結果が出なくても焦る必要はない、という励ましの言葉として使われます。
使用例:「彼は大器晩成型で、40代になって才能が開花した」
出典:老子 第四十一章(中国・春秋〜戦国時代)
切磋琢磨
せっさたくま
互いに励まし合い、競い合いながら向上すること
由来
骨を「切」り、象牙を「磋」ぎ、玉を「琢」ち、石を「磨」く——職人が素材を加工する4つの工程を、人が学問や人格を磨く過程にたとえた言葉です。衛(春秋時代の国)の名君・武公の人格を称える詩に由来します。
使用例:「同期のメンバーと切磋琢磨しながら成長した」
出典:詩経 衛風・淇奥(中国・周代)
傍若無人
ぼうじゃくぶじん
周りの人のことなど気にせず、勝手気ままに振る舞うこと
由来
「傍らに人無きが若し(かたわらにひとなきがごとし)」——後に始皇帝暗殺を企てることになる刺客・荊軻(けいか)が、若い頃に友人の高漸離(こうぜんり)と酒を飲んでは大声で歌い騒ぎ、まるで周りに人がいないかのように振る舞っていたという逸話に由来します。
使用例:「電車内での傍若無人な態度に眉をひそめる」
出典:史記 刺客列伝(漢・司馬遷)
竜頭蛇尾
りゅうとうだび
初めは勢いが盛んだが、終わりに近づくにつれて振るわなくなること
由来
「頭角を見て取れ。似てはいるが、まだ本物ではない。竜頭蛇尾になるだろう」——ある禅僧が、いかにも立派に見える問答の相手を見抜いた際に使った言葉に由来します。禅の語録『景徳伝灯録』に見え、のちに『碧巌録』などでも繰り返し用いられました。頭は竜のように立派でも、尾は蛇のように貧弱、という対比が的確な比喩として定着しました。
使用例:「あの企画は竜頭蛇尾に終わった」
出典:景徳伝灯録(中国・宋代)/碧巌録にも頻出