仕事でさりげなく使える
大和言葉12選
日本固有の言葉「大和言葉」を
現代の表現に取り入れるヒント。
大和言葉とは
日本語の語彙は大きく三つに分けられます。大和言葉(やまとことば)は漢語(中国語由来)でも外来語(英語等)でもない、日本固有の語のことです。「うみ(海)」「やま(山)」「こころ(心)」のように、日本語の根幹を成す言葉の多くが大和言葉です。[1]
現代の日常会話では漢語や外来語が多く使われますが、大和言葉には漢語とは異なる柔らかさ・品のよさがあります。仕事の場面でも「おもんぱかる」「ことのほか」のような言葉が自然に出ると、相手に丁寧な印象を与えることがあります。以下の12例を参考にしてください。
「大和言葉」の範囲について: どの語が大和言葉にあたるかについては言語学的な定義が完全に確定しているわけではなく、漢字で書かれていても和語のものがある一方、長く使われて定着した漢語が和語同様に感じられる場合もあります。以下の12語はいずれも和語(日本語固有の語)として一般的に認められているものです。
思考・態度を表す言葉
深く考える、周囲の状況・相手の気持ちに配慮する
「思う」と「はかる(量る・図る)」が結びついた和語で、単に考えるだけでなく、相手や状況を十分に踏まえた上で考えるというニュアンスを持ちます。「熟慮する」より感情的な配慮のニュアンスが強い言葉です。
「相手の立場をおもんぱかって返答を選んでほしい」
「全体への影響をおもんぱかった上での判断でした」
常に意識して行動する、気をつける
「心に掛けておく」という和語的な意味から来ています。単に「気をつける」より継続的・能動的なニュアンスがあり、習慣的な意識を表します。
「報告のタイミングを早めることをこころがけています」
「丁寧なコミュニケーションをこころがけてきました」
一つのことに向かって脇目もふらず取り組むさま
「ひたぶる(ひたすら)」に「向く」が結びついた和語です。外側に目を向けず真っすぐに進む姿勢を表します。「熱心な」よりも「迷いのない、一途な」というニュアンスが強い言葉です。
「ひたむきな姿勢で取り組んでいるのが伝わります」
「ひたむきな努力が今の成果につながった」
成し遂げたいという強い意志・目標
「心が指す方向」を意味する和語で、単なる目標(目標・ゴール)より心の深い部分にある動機・理念を指します。改まった場面や自己紹介、プレゼンでの使用が自然です。
「高いこころざしを持って入社しました」
「創業時のこころざしを忘れずに続けてきました」
状況・程度を表す言葉
予想以上に、格別に
「普通のことを外れるほど」という意味の和語です。「非常に」「とても」よりも品のある改まった表現で、予想を超えた程度であることを強調します。好意的な文脈でよく使われます。
「ことのほか好評をいただきました」
「準備に時間をかけた甲斐があり、ことのほか良い仕上がりになりました」
仕事・作業が順調に進む
「はか(効果・成果)が出る」という意味の和語です。「進む」や「進捗する」より生き生きとした口語的なニュアンスがありますが、会話でも文章でも使える言葉です。
「今日はよくはかどりました」
「集中できる環境を整えることで作業がはかどります」
ある分野の知識・情報が少ない
「まばらである、遠い」という意味の和語「うとし」から来ています。「詳しくない」「苦手」の代わりに使える表現で、自分の不得意分野を表明する際の自然な言い方です。
「財務の分野には疎くて恐縮ですが……」
「その業界には疎いので、教えていただけますか」
行動・姿勢を表す言葉
特別なそぶりを見せないさま、自然な気遣い
「さり(去り)」+「気」+「ない」が変化した和語とされます。意図的な行動なのに自然に見える、という日本語らしいニュアンスを持ちます。意識的な配慮を「おしつけがましくない形」で表したいときに使えます。
「さりげないフォローがありがたかったです」
「さりげなく場の雰囲気をまとめてくれた」
きびきびと、よく気がついて行動するさま
「甲斐(かい)」=効果・働きという和語を重ねた副詞で、テキパキと役に立つように動く様子を表します。他者の行動を評価するときに使える表現です。
「新入社員がかいがいしく準備をしてくれていた」
「かいがいしく動いてくれたおかげで助かりました」
遠慮する、気兼ねする
「はびこる(広がる)」と同語源の和語で、「踏み出すことをためらう」という意味です。「遠慮する」より心理的なためらい・後ろめたさのニュアンスが強い表現です。
「人目をはばかることなく、意見を述べてください」
「お手数をかけることをはばかっていました」
丁寧に、心を込めて
「念入りに(ねんに)」が変化した和語とされ、「心が込もっている」「丁寧に扱う」という意味を持ちます。現代語では改まった文章・挨拶状などで使われることが多い表現です。
「ねんごろにご対応いただき、感謝しております」
「ねんごろに引き継ぎを行いました」
生計を立てるための仕事・業
「成り行き(生きていくこと)」+「業(わざ)」が合わさった和語です。単なる「仕事」より「それで生きている」という重みのある表現で、自分の事業や職業を語るときに改まった雰囲気を出せます。
「ものを書くことをなりわいにして20年になります」
「このなりわいを続けていくために、品質を大切にしてきました」
使うときの注意点
大和言葉を仕事の場面に取り入れる際は、文脈と相手との関係性を意識することが重要です。改まった文章・挨拶状・スピーチでは効果的ですが、カジュアルなSlackメッセージや緊急のやり取りでは「わかりやすい言葉」の方が適している場合もあります。
💡 言葉の「品のよさ」は、難しい言葉を使うことではなく、場面に合った言葉を選ぶことから生まれます。大和言葉はその選択肢のひとつとして活用してください。
参考文献
- 山口仲美(2006).『日本語の歴史』. 岩波新書. ——大和言葉・漢語・外来語の語種分類について参照.