アマゾン川はなぜ「アマゾン」?
世界の地名の由来12選
地名は、誰かが何かを見て名付けたものです。
その瞬間の勘違いや驚きが、今も世界地図に残っています。
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アマゾン川はなぜ「アマゾン」なのか
南米を流れる世界最大の川。その名は、ギリシャ神話の女人族アマゾネスに由来するとされています。
1541年、スペインの探検家フランシスコ・デ・オレリャーナがこの川を下っていたとき、現地の人々との戦闘に遭遇しました。彼はその記録に、女性の戦士に攻撃されたと書き残しています。弓を引く女性たちの姿が、ギリシャ神話に登場する女だけの戦士部族アマゾネスを連想させた——それがこの川の名になったという説です。[1]
ただし由来には複数の説があります。現地の言葉で似た音を持つ語に由来するという説、さらに遡る系統を想定する説も伝わっており、定説として確立しているわけではありません。
「現地語で水の音」という説について
インターネット上では「アマゾンとは現地語で水の音を意味する」という説明を見かけることがあります。しかし、この説は主要な文献で確認できるものではありません。
有力とされるのはあくまでオレリャーナの命名説であり、次点が「現地語の似た音の語」説です。「水の音」という具体的な意味を挙げる説は、どこかで生まれた俗説である可能性が高いと考えられます。
💡 由来の話は語りやすいぶん、根拠のないものも広まりやすい分野です。きれいに説明がつく話ほど、一度立ち止まる価値があります。
実は名前が「意味そのまま」だった地名
ゴビ砂漠 — 「砂漠砂漠」
モンゴル語 Говь(ゴビ)
モンゴル語の「ゴビ」は、「沙漠」「乾燥した土地」「礫が広がる草原」を意味します。つまり「ゴビ砂漠」と言うと、「砂漠砂漠」という重複表現になります。日本ではこの呼び方で定着しているため、間違いというわけではありません。
サハラ砂漠 — こちらも「砂漠砂漠」
アラビア語
そしてサハラも同様です。サハラはアラビア語で「砂漠」を意味する語で、とくに平坦な砂漠を指します。世界の二大砂漠が、どちらも現地語では「砂漠」という名前だったことになります。
ヒマラヤ — 「雪の住処」
サンスクリット語 hima + ālaya
hima(雪)とālaya(すみか)が合わさった言葉です。世界最高峰を抱く山脈にふさわしい、そのままの名前でした。
死海 — 生き物が住めない海
塩分濃度が極端に高い湖
塩分濃度が非常に高く、生物がほとんど生きられないことに由来します。ヨルダン川から水が流れ込む一方で流れ出る川がなく、蒸発によって塩分が濃縮され続けた結果です。
誤解や見立てが、そのまま国名になった
カナダ — 「村」を国名だと思った
イロコイ語 kanata(村・集落)
1535年、フランスの探検家ジャック・カルティエがセントローレンス川流域に到達したとき、現地の人々が「カナタ」と口にするのを聞きました。カルティエはこれを地名だと受け取りましたが、実際には「村」あるいは「集落」を意味する普通名詞でした。この聞き間違いが、そのまま国名として定着したというのが一般的な定説です。[2]
ベネズエラ — 「小さなヴェネツィア」
イタリア語 Venezuela
1499年、アロンソ・デ・オヘダとアメリゴ・ヴェスプッチがマラカイボ湖畔を訪れた際、水上に建ち並ぶ先住民の家々を目にしました。その光景が水の都ヴェネツィアを思わせたことから、「小さなヴェネツィア」を意味する名が付けられたと伝えられています。
パタゴニア — 「大きな足」(諸説あり)
スペイン語 patagón
1520年、マゼラン一行がこの地方を探検した際、先住民の足跡の大きさに驚いて「大きな足」の意で名付けたという説が通説とされています。ただしこの語源には疑問も呈されており、スペインの騎士道小説に登場する人物名に由来するという説もあります。断定はできません。
名付けた人の感情が残る地名
太平洋 — 「平和な海」
ラテン語 Mare Pacificum
1520年、マゼランは南米最南端の海峡を苦難の末に抜けました。その先に広がっていた海があまりに穏やかだったことから、ラテン語で「平和な海」と名付けます。これが英語の Pacific Ocean となり、日本語では「平和・穏やか」を意味する「太平」の字を当てて「太平洋」になりました。
ブラジル — 赤く燃える木
ポルトガル語 pau-brasil
かつてこの地の特産品だった赤色染料の原料、パウ・ブラジルという木に由来します。ポルトガル語で「炎のように赤い木」を意味する名前でした。産物の名前が、そのまま国の名前になった例です。
シンガポール — 「獅子の町」
サンスクリット語 siṃha + pura
siṃha(獅子)とpura(町)が合わさった言葉です。14世紀末には「シンガプーラ」という名称が定着していました。シンガポールにライオンは生息していませんが、名前とマーライオンにその由来が残っています。
ユーフラテス川 — 「渡るのが簡単」(諸説あり)
古代ペルシア語
メソポタミア文明を育てた大河です。古代ペルシア語で「渡るのが簡単」を意味する語が語源とされます。古代ギリシャ語の Euphrátēs は古代ペルシア語から、さらに遡るとエラム語に行き着くとされますが、意味には諸説があります。
なお「大西洋」は「大」、「太平洋」は「太」と字が違います。太平洋の「太」は「太平(世が平和で穏やかなこと)」から来ているためです。
地名は、誰かが見た景色の記録
こうして並べてみると、地名の由来にはいくつかの型があることが分かります。
見たものを言葉にした(アマゾン川・パタゴニア・ベネズエラ)
その土地の言葉がそのまま残った(ゴビ・サハラ・ヒマラヤ)
勘違いが定着した(カナダ)
名付けた人の感情が残った(太平洋)
世界地図を眺めるとき、その名前を最初に口にした人が何を見ていたのかを想像すると、少し違った風景が見えてきます。
💡 綾解きの「地理」ジャンルでは、正解するたびにその地名にまつわる豆知識が表示されます。
参考文献
- アマゾン川の命名経緯について、フランシスコ・デ・オレリャーナの探検記録に関する記述を参照.
- 各地名の語義・由来について、コトバンク(日本大百科全書・世界大百科事典ほか)の該当項目を参照.
- ゴビ(モンゴル語)およびサハラ(アラビア語)の語義について、各言語の辞書的記述を参照. いずれも「砂漠」を意味する.
※ 本記事で「説」と記したものは、いずれも定説として確立したものではありません。とくにパタゴニア・ユーフラテスの語源、およびアマゾン川の由来には複数の説があります。