知っていると自慢できる日本語クイズ
——意外な本来の意味10選
日常で当たり前に使っているその言葉、
本来の意味を正確に知っていますか?
言語は変化する——でも本来の意味も面白い
言葉の意味は時代とともに変化します。文化庁は毎年「国語に関する世論調査」を実施しており、慣用句の意味についての認識が調査ごとに変化していることが報告されています。[1]
「現代で広く使われている意味」と「歴史的・本来の意味」が食い違う表現は少なくありません。どちらが「正しい」かは一概には言えませんが、両方を知ることで言葉の使い方に深みが増します。以下の10例を確認してみてください。
ことわざ編
情けは人の為ならず
よく見られる解釈
「人に情けをかけると、その人のためにならない」
本来の意味
「人に情けをかけておくと、回り回って自分のためになる」
「人の為ならず」の「ならず」は「ならない」ではなく「ためにならないわけではない(=ためになる)」という強調の否定(二重否定に近い構造)です。文化庁の平成22年度調査では、本来の意味で理解している人と異なる意味で理解している人がほぼ同数(約45%ずつ)という結果でした。[1]
他山の石
よく見られる解釈
「他人の良い行動・成功を見習う」
本来の意味
「他の山の粗悪な石でも、自分の玉(宝石)を磨くのに役立つ——他人の失敗や欠点を自分への教訓にする」
出典は中国の詩集「詩経(しきょう)」の「他山之石、可以攻玉(他山の石、以て玉を攻むべし)」です。本来は「粗悪なもの・失敗から学ぶ」という意味で、良い手本を見習う意味ではありません。
出典:詩経「小雅・鶴鳴」
七転び八起き
疑問に思う人が多いポイント
「7回転んで8回起きるのはなぜ? 8回転ぶと9回必要では?」
本来の意味
最初から立っている状態を「1起き」と数えるため、7回転んで8回起きることに矛盾はありません。「何度失敗しても諦めず立ち上がる」という意味です。
数の矛盾に見える点が実は気になって記憶に残りやすいことわざの一つです。なお、四字熟語では「七転八起(しちてんはっき)」とも書きます。
二兎を追う者は一兎をも得ず
よく見られる誤った引用
「二兎を追う者は一兎をも得ない」(という日本のことわざ)
出典について
英語のことわざ "If you run after two hares, you will catch neither." が日本に入ったもので、日本古来のことわざではありません。ラテン語や英語圏に類似表現があります。
日本語のことわざのように普及していますが、起源は西洋のことわざです。意味は「欲張って二つのことを同時にやろうとすると、どちらも成就しない」で、現代でも正しく使われています。
慣用句・表現編
敷居が高い
現代での広い使われ方
「高級すぎて・ハードルが高すぎて入りにくい」
本来の意味
「不義理・不面目・迷惑をかけた相手の家に行きにくい」という、後ろめたさから来る感覚を表す表現
文化庁の調査では、本来の意味ではなく「高級すぎて・ハードルが高い」という意味で使う人が多数を占めています。本来の意味と異なる用法が広く定着した例のひとつです。[1]
煮詰まる
現代での広い使われ方
「行き詰まって先に進めない状態」
本来の意味
「議論や検討が十分に重ねられ、結論が出そうになった状態(煮物が煮詰まって完成に近づく状態から)」
「煮詰まった会議」は本来「結論が出そうな、よく議論が進んだ会議」を指しますが、現代語では「行き詰まった会議」という意味でも広く使われています。文化庁の調査でも認識のずれが報告されています。[1]
穿った見方(うがった見方)
現代での広い使われ方
「ひねくれた、疑ってかかった見方」
本来の意味
「物事の本質を鋭く見抜いた見方」(穿つ=掘り貫く→核心をつく)
「穿つ(うがつ)」は「穴を開けて貫く」という意味の動詞で、「本質を見抜く・核心をつく」という良い意味を持ちます。「うがった見方をしている人だ」と言われたら、本来は褒め言葉です。
確信犯
現代での広い使われ方
「悪いと分かっていながら、わざとやる人・行為」
本来の意味(刑事法学の用語)
「政治的・宗教的・道徳的な確信に基づいて、自分の行為が正しいと信じて行う犯罪(または犯人)」
法学上の用語として、「自分の行為が正しいと信じている」点が重要です。現代語の用法(「わかってやっている」)とはニュアンスが大きく異なります。なお、現代語の用法も広く定着しており、辞書によっては両方の意味を掲載しています。
さわり(触り)
現代での広い使われ方
「話や作品の最初の部分・導入部」(「さわりだけ聞かせて」)
本来の意味
「話や作品の最も印象的な・核心的な部分」(浄瑠璃・義太夫節の用語が一般化)
浄瑠璃や義太夫節で聴衆の心に触れる「聞かせどころ」をさわりと呼んだことが語源とされます。「さわりだけ聞かせて」は本来「一番いいところだけ聞かせて」という意味ですが、「冒頭だけ」という意味での誤用が広まっています。
「誤用」への向き合い方
言語学者の間でも、「本来の意味」と「現代で広く使われる意味」のどちらが正しいかについては慎重な姿勢が一般的です。言葉は社会の中で使われることで変化し、広く定着した用法はその時代の「正しさ」を持ちます。
ただし、本来の意味を知っておくことには実用的な利点があります。フォーマルな文章や仕事の場面で、意図せず誤解を招く使い方を避けられるからです。「この表現は人によって解釈が違うかもしれない」と意識するだけで、言葉の選び方が変わります。
💡 言葉の本来の意味を知ることは、批判のためではなく語彙の幅を広げるためです。「このことわざはこんな歴史があったのか」という発見が、言葉への興味をさらに深めてくれます。